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2013年08月15日

青いキズ


 「 なんすっとか! ふざくんな!! 」




  高3の7月



  ちょっとばかり 早く到着した 教室

  いつも早く教室に来ている気の合う友人と、談笑していた 清々しい朝に それは起こった





  いつも不機嫌な顔をしていて、 

  ちょっと気の弱そうな同級生を見つけると、何でも言い掛かりをつけて暴力をふるう Ι




      そいつが、私の横を通りざま、 頭を殴って行った





  他の同級生への仕打ちを知っていたし、

  私自身も何度か言い掛かりをつけられそうになったので用心はしていたのだけど

  その朝は、まったくの無防備なところを後ろからやられた



  振り向いて、ヤツに向かって叫び、

  それ以上は無視するように 仲間へ向き直り 話の続きを始めようとしたとき、

  足音が・・




       スタ スタ スタ ・・・ ・・・  ばちん!





   キーン と する右耳 、 右頬に激しく痺れる感覚 





 Iが、私の後ろに立ち、右の手で私を激しく叩いたのだ




  

  右の顔に 激しい痛み感じながら、





         ぷつっ




  何かが、自分の中で 弾ける音が ハッキリ聞こえた



  私は、自分の席を立ちあがり、

  教室の奥、  窓際の一番後ろの席へ まっすぐに 向かっていく




  今までにも、友達とケンカをしたことあるけれど、

  殆どが クチ喧嘩 

  取っ組み合いのケンカもしたことはあったけど

  元来の運動音痴なので、相手に手を上げることはなかったと思う




      こんなに激昂したのは初めてだろう




      おそらく、凄い形相だったに違いない




  現に、ヤツは まさか逆上してくるとは思わなかったのだろう



   椅子を両手で抱え、私を よせつけまいと引き攣った表情をしている




  もがき合いの中、 

  私は身体の中から湧き上がる 黒い憎悪 に支配されていた





  同級生何人も被害に遭っている、こんな ヤツ ここにいることが許せない

  そうだ、窓から突き落としてやれ



  自分より上背のあるヤツをタダ睨みつけ、無言で襲ってくる相手に怯んだのか

  次第に Iは、椅子を振り回しながら教室の隅に追い込まれて行った





   どのくらいの時間がたった頃だろう



       ふっ...



  私は我に戻る


  頭から背中へ 冷たい汗が流れる





     おれは、  いま  何てことを考えていたのだろう




 一瞬ではあったけど、『殺意』 にも似た感情を覚えた  自分に恐怖した




   ピーンポーン・・・  



 朝のホームルームの時間を告げるチャイムが鳴り響いた時、

 私は無言で自分の席へ


  周りを見回すと、いつのまにか 、隣のクラスからも 野次馬が押し寄せてきていて取り囲まれていた





  ホームルームの時間、 先生の話は全く耳に入らない




    やはり 納得いかない自分の感情の捌け口が見つからず

    怒りだけが、まだフツフツと燻り続けている




  ホームルームが終わった



    私は立ち上がり、窓際の一番後ろの席へ



    怒りを押さえることが出来ない


    ・・・・・・ でも、手を出すと またあの黒い憎悪に支配されそうな 自分が怖い


    I を睨みつけたまま動けなかった



      ばちん!




   今度は、左頬を殴られた



     それでも、手は出さぬまま 憎い相手を 再度睨みつけ 教室の外へ


  廊下の水道の蛇口で、ハンカチを濡らし 鼻血を拭った







  その日の昼休み、職員室へ   呼び出し



 生活指導をしている、体格の良い先生に いろいろ聞かれる

   粗方、誰かが先生に話してたんだろう  殆ど 頷くだけだった





  最後まで手を出さなかった 私は、何のお咎めもナシ

  ただ、右の耳は 鼓膜が破れ 全治一カ月




  私の他にも暴力振るっていた Iは、停学処分




  担任から、数日後 I と両親が自宅へ謝りに来るので居るようにいわれたけど、

  いつも溜まり場になっていた友人の家へ行き、その日は遅くなるまで帰らなかった




  「 あいつの両親はなぁ~、いま仲が悪くて離婚話が進みようるんだ、 

    だからムシャクシャして、学校で他のもんに当たり散しよったったいね・・・」




       そんなことは、俺には関係ないだろう!



   生活指導の教師も担任も、

   「おまえは手を出さなかったから偉い」  といったけど、

   本当はどうだったのか、今でもわからない

   あのときのことを思い返すと、4半世紀たった今でも 拳に何とも言えない感情が押し寄せてくる












   先日 招待された  高校の同級生の結婚式


  あいうえお順で、私のすぐ後ろの席だった同じ招待客の同級生

  すっかり私の事忘れているようだったけど

  会場を出るときに、思い出したようで 




 話し掛けてきた言葉で  思い出した 昔のこと







  『 I 君に、いつもイジメられてた◎◎やろ 』







      この同級生の瞳には、光がなかった

  







 









  


Posted by ポテト at 13:38Comments(0)